ぬるくなったビール

 

 

 

 

綱渡りの日々は、彼に出会ってからあっという間に終息した。

終わる前には、この生活がもし終わったら、きらめく泡沫のように回想するだろうかと想像していたが全くそうではない。

たとえるとしたら浴びるようにお酒を飲んだ、その夜の記憶がぼんやりとしているが二日酔いは酷い、みたいな感じ。自分で消すことができなくて、でも原因についてほとんど何も覚えてないような。何だったのだろう

 

あの日々。

体重を7キロも失った、夜な夜な泣き続けた、肌が荒れて、堕胎をした。まともな食事をとれなくなった、睡眠もおざなり。

散々な日々だった。

毎日祈るように暮らした。

ひとりだった。

 

苦しんだ割に本当に何も残らない、意味のない、不必要な苦しみだった。追い詰めたのは私だった、今ならはっきりそう思うけど、渦中にいる間は分からなかった。

 

そんな地獄から救い出してくれたのだから彼は、はじめから私にとってスーパースターで、大切。

 

 

 

最低の日々は私の中にずっと生き続けるけれど、表面的には無かったことにする。

無かったことになることがずっと怖かったけど、無かったことにはならないねというのが最近の考察。

 

彼と自分を大切にすること、生活をまもること。それだけ守ってずっと生きられたらいいと思う。