会うたびこれを最後にしようと思うから、自分自身や部屋の整頓、すべてのコンディションを手を抜かずに整える。
彼に片思いをして、これから迎える冬で実に3年の月日が経ったことになる。
私は女の旬を捨てるように使って、この秋で27歳になった。こんなに長く片思いをしてるなんて。大人になってまで、まだ?信じがたい。
おとなになってまで胸を焦がして
ときめいたり傷ついたり慌ててばっかり‥と椎名林檎がうたうのを聞き流していたあの頃を思い出す。
出社前の自分を奮い立たせるよう、飲み終わったコーヒーカップを洗いながら口ずさむようになったのはいつからだっただろう。
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兄が鬱になった。
友達も昨年の冬診断を受けた。
会社の同期はその前年から、そういえば学生時代優秀だった後輩も2年近く引きこもっていると聞いた。
なにが。
何がみんなをそんなに追い詰めるのだ。
健康で明朗なはずのた彼らを。
みな一様に笑って話してくれる。
私や、他の人と会うときは調子を整えて臨むのだと教えてくれる。
さっきまで、チーズの質がどうとか、このパスタのコシがすごいとか、ワインは何にするとか、そんな話をしていたはずなのだ。
だから私は笑って聞く。
なんてことのない会話の延長だと思いたくて。
普段よりも、気持ち大きな声で笑う。
頭の隅に、冬の朝の窓ガラスの結露を思い出す。
あるいは、魚の小骨がのどに詰まったときの感覚。
背筋がひやりとして、くるしくなる。
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好きな人がそばにいてすぐに抱きすくめてくれたらいいのに、とまた願ってしまう。